南仏な会話 6



自転車に乗るにあたっては、安全のためにも、日除けのためにもヘル メットがいります。今回は、はじめから予定していたので、日本から ヘルメットを持参していました。

アプトから、リュベロンとは反対の方向に北上します。 丘陵地帯にさしかかる直前の高台にあるのが St.Saturnin の村。 この村は、予想外にすばらしいのです。 ニースの裏山の鷹巣村は険しいガケの上に立っているので、どうして も坂や階段がきつくて、余裕がありません。その点、このあたりは勾 配がゆるいので、道も広くて、おおらかさがあります。そして、リ ュベロンの盆地やその向こうのリュベロンの山塊が見下ろせて、すば らしい眺望です。

で、Office de Tourisme があるので中へ入って、質問しながら地図 を買います。若い奥さんが対応してくれます。 それから自転車を前にとめて、地図をみながら風車を見に行きます。 この風車は、有名なドーデの風車のような「はりぼて」あるいは「観 光用のダミー」とちがって、本物です。つまり、つい先ごろまで動い ていた、という感じのしっかりしたなできです。それにロケーション もドーデの風車よりいいです。つまり、見晴らしがいいのです!

その時点で私は、ヘルメットを Offcie du Tourisme に忘れてきた ことに気付きます。まあ、自転車に戻るからそのときに回収すれば いいや、と気軽に考えます。

写真をとったりして、オフィスに戻ったらなんと鍵がかかって入れ ない! 時刻は11時59分。教会の鐘が鳴ります。 表示を見ると、13時から16時までがクローズ、と書いてある。 つまり、今は絶対開いていないといけないのだが。

近くのたばこ屋のおばさんに「Office du Tourisme の奥さんは どこの人ですか?」ときいても「分からない」という。小さな町 なので、全部顔見知りかと思ったのに。

さあ、困った。しばらく前の芝生で待つが、先ほどの奥さんが現 れる気配はない。明日、帰りに回り道してもう一度ここを通りな がら回収することにしようか。 そうすると、せっかく持ってきたヘルメットを使わないで、この 強烈な日差しの中を走るのか・・・ とりあえずあとで電話できるようにと、電話番号だけひかえて 、とぼとぼ自転車を押しながら山越えの道にむかいます。

そうしたら、小型車が止まって、運転している女性が何か言って います。
「ん?」と近寄ってよく聞くと「ヘルメットを忘れなか ったか?」と言っているようです。
「そうなんですよ!」と私。
「じゃ、オフィスに戻るから。」と、乗用車と自転車は急いでオ フィスに戻ります。
「偶然私を見つけたのですか? それとも、わざわざ探してくれた のですか?」と私。(このフランス語、難しかった!)
「自転車があったので、そうだろうと思っていたけど、探してい たのですよ。」とても親切なご婦人、ふわふわスカートが涼しげ でした。

ちなみに、ヘルメットのフランス語なんて、どうして分かるのか って?フランスには、「カスク・ブルー」という「青ヘル部隊」 がいて、戦乱の地に派遣されるのです。戦乱関係のニュースを見 て覚えていました。ちなみに、わたしのかぶっていたのは、「カ スク・ノワール」、黒でした。


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